ショベルヘッドはなぜ誤解されてきたのか — 1966〜1984、AMF時代を生き抜いたエンジン

ナックルは拳、パンは調理器具。ではショベルヘッドは何かというと、ロッカーカバーの形がスコップ(シャベル)の先端に似ているからです。ハーレーのニックネームは、どれもエンジンの一番目立つところから取られています。

ただしショベルヘッドには、他の機種にない事情があります。長い間、このエンジンは「外れ年度」扱いされてきました。今回は、なぜそうなったのか、そしてなぜ今再評価されているのかを書きます。

パンヘッドから何が変わったのか

1/6スケール アーリーショベルマグネトー付きエンジンモデル リンカートDC仕様

1966年、パンヘッドの後継として登場したショベルヘッドは、実は全くの新設計ではありません。変わったのは主にシリンダーヘッド周りです。

  • 燃焼室とポート形状の見直し。吸排気の効率が上がり、同じ排気量でもパンヘッドより明らかにパワーが出るようになりました。
  • ロッカーアームの配置変更。これに伴ってカバーの形が変わり、あのスコップ型のシルエットが生まれました。

下回り、つまりクランクケース以下は、登場時点ではパンヘッド時代のものをそのまま引き継いでいました。だから初期ショベルは、上がショベルで下がパンという過渡的な構成になっています。

年式の見分け方 — 2つの時代

年代 特徴
1966〜1969(ジェネレーターショベル) パンヘッド由来の下回りに、縦型のジェネレーターを前方に背負う構成。クラシックな見た目を好む層に今も人気があります
1970〜1984(コーンショベル) 発電をオルタネーターに変更。右側のカバーが円錐形(コーン)になり、ここで見分けられます。1978年には74ciに加えゆ80ciが追加されました

写真でショベルの年式を当てるとき、ベテランはまず右側を見ます。円錐形のカバーがあればコーン、縦に伸びた圓筒があればジェネレーター。これだけで大きく2つに分けられます。

AMF時代というレッテル

ショベルヘッドの評価を複雑にしているのが、この時代のハーレーがアメリカン・マシン・ファウンダリー(AMF)の傣下に入っていたことです。増産優先の方針の下で品質のばらつきが大きくなり、オイル漏れや振動、電装トラブルの話はこの時代の代名詞になりました。日本車が性能で一気に前に出た時期とも重なっています。

だから長い間、ショベルは中古市場で安いエンジンでした。しかしその安さが、結果としてカスタム文化を育てます。壊れても惜しくないから手を入れられる。チョッパーもボバーも、ショベルをベースにした一台が膳しに並んでいます。

そして今、ナックルやパンの相場が手の届かないところまで上がった結果、「実際に乗っていじれるビンテージハーレー」としてショベルが見直されています。欠点が多いからこそ、手を入れる楽しみが残されているエンジンだと思います。

キャブレターで選ぶショベル

ショベルヘッドは、ハーレーの中でもキャブレターのバリエーションが最も豊かな機種です。

工場純正としては、ケイヒンのバタフライキャブが1976〜1984年式に採用されています。ここはよく誤解されるので注意が必要で、エンジン自体の生産期間(1966〜1984)とは別ものです。ケイヒン付きのショベルは、ショベル時代の後半を表す顔ということになります。

一方、カスタムの世界で圧倒的に多いのがS&Sへの換装です。Bキャブの武骨な面構え、Eキャブのバランス、Lキャブのコンパクトさ。ツースロートに至っては、それだけで一台の性格が決まるほど存在感があります。見分け方はキャブレター7種の記事にまとめてあります。

1/6スケールでショベルを作るときに見ているもの

ショベルの難しさは、ロッカーカバーの平面とリブの出方にあります。パンヘッドのような曲面の美しさで見せるエンジンではなく、平面の平らさとエッジの直線が出ていないと、一発で安っぽく見えてしまいます。

もう一つは、コーンカバーの円錐の角度。ここが少しでも違うと、ショベルに見えなくなります。年式ごとに実車資料を見ながら、キャブとの組み合わせで全体のバランスを取っています。

ショベルヘッドのエンジンモデル

当店では、ショベルヘッドをキャブレター別に作り分けています。シリーズ中で最もバリエーションの多い機種です。

次回は、ショベルの後を継いだ1984年登場の「エボリューション」について。ハーレーを倒産寸前から救ったと言われるエンジンです。

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